記憶のなかの愛です。

グレースは十八歳のとき、初恋の相手ニックと密かに結婚した。
だがハネムーンに旅立つ直前、彼は短い置き手紙だけを残し、グレースの前から永遠に姿を消してしまった。
十年たった今、彼女はようやく前に進む決意をし、離婚を請求するために、私立探偵を雇って彼の居所を突きとめた。
直接会って、早くすべてを終わらせてしまおう。
そう思ってニックの住む町まで車を走らせている途中、グレースは嵐に巻きこまれて事故を起こす。
病院で目覚めた彼女からは、いっさいの記憶が失われていた。
そしてベッドのかたわらには、夫と名のる男性の姿があった。
シドニーはイエローストーン国立公園のレンジャーから高校教師に復帰し、新しい生活を始めようとしていた。
その矢先、映画俳優のような美貌の男性の訪問を受ける。
以前の赴任校で、人知れず恋い焦がれていたケンドル神父だ。
しかし、神父はガウン姿ではなくスーツに身を包み、自分をジャロッドと名前で呼ぶようシドニーに言う。
いったいどういうこと? あなたを忘れるために町を去ったのに。
シドニーは混乱し、神父に向かって“帰って”と叫んだ。
一度だけ交わした熱いキスに振りまわされてはいけない。
彼は神のしもべ、結婚することの許されない身なのだから――。
故あってイタリアで暮らすセシリーは怒りを覚えた。
十七歳の継娘がイギリス人子爵に騙されていると聞かされたのだ。
ふたりを引き離すために相手の館へ出かけたところ、そこにいたのは子爵のいとこにあたる公爵―― ドメニコだった。
彼もセシリーと同じ目的でヴェネツィアから戻ってきたという。
ふたりをけしかけたとドメニコに疑われ、彼女はさらに憤慨する。
その夜、音楽会で再会したセシリーに彼は意味ありげに言った。
「明日あなたの館を訪ねる。
お互いをよく知り合うために」あのふたりのことを話し合いに来るだけなのに、彼はどうしてわたしに気があるふりをするのかしら……。
サクソン人のアドラーは子どものころバイキングに拉致され、彼らの村に抑留されていた。
今や戦士となったアドラーはかつて習い覚えた言語の才をかわれ、通訳として和平交渉の場に駆り出される。
いとこのバヤードがサクソンの村を守るため、思いきった手段に出たのだ。
エンドレディという名前のバイキングの娘と結婚することで、村に平和をもたらすつもりだという。
エンドレディの姿を目にしたアドラーは驚愕する。
それは幼い日、共に遊び、心を通わせた娘だった。
エリオット家の令嬢スカーレットには、誰にも言えない秘密があった。
それは、双子の妹サマーの婚約者、ジョンを愛しているということ。
ところが、思いもよらないことに、サマーがロックスターと恋に落ち、ジョンとの婚約をあっさり解消してしまったのだ。
せめて失意のジョンをなぐさめてあげなければ。
その一心でジョンを訪ねたスカーレットは、秘めた情熱のおもむくままに、ジョンと一夜をともにしてしまう。
いくら彼を愛していても、二人の仲は決して公にできない。
これは一カ月だけの夢と心に決め、スカーレットはジョンとひそかに付き合いはじめたが……。
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